”裸の王様”なんじゃない?・・・ yuri

黒澤明監督の「醜聞 スキャンダル」(50年 松竹作品)を見ました。
もちろん、山口淑子が出ているから。


驚いた。
はっきり言って駄作。
でももっと驚いたのは、山口淑子のまあすさまじい大根ぶり。
彼女はもしかして、いつもあの美貌を見せるだけでよしとされていたんじゃないかしら?
彼女の売り物の歌も2つでてきた。けれどこれも、ただ無表情にうたうだけ。「きみよ知るや南の国・・・」なんて、場違いすぎて笑っちゃうけど、彼女がうたえそうな歌の中からムリに選んだ感じだ。


山口淑子は人気者の歌手という設定。
それが、ふとしたことから山の温泉宿に新進画家(三船敏郎)と一緒にいるところを雑誌記者に見られて、スキャンダルになる。
画家と歌手が雑誌社相手に訴訟を起こした。依頼した弁護士(志村喬)の娘(桂木洋子)は、結核で寝たきりになっている。
クリスマスの晩、画家と歌手は娘を見舞い、そこで「きよしこの夜・・・」をうたうのだけれど・・・。
瀕死のかわいい少女が目の前にいるというのに、ただ無表情にうたうだけって、いったい何考えてるの?


法廷の場面でも、結局裁判に勝ってインタビューを受ける場面でも、山口淑子にはまるでセリフがないせいもあるけれど、何考えているか分からない無表情。
あんな重要な役でありながらセリフがほとんど無いのは、黒澤監督が彼女にセリフを言わせるのをあきらめたんじゃないかな。
重要でないいくつかのセリフの棒読み加減から推測して、そんな感想を抱いてしまった。


この作品のとき、山口淑子は30歳。
新進画家のモデル役で登場する千石規子は、このとき28歳だけれど、生活の苦労も知っている大人のいい味を出していた。
山口淑子さんは、美人過ぎるのが災いしているのかしら?
それとも「支那の夜」で大当たりしてしまったために、本気で駄目出ししてくれる人を、ついに持てなかったのだろうか。
やはり若いときに叩かれないのは不幸だ。皆知っていながら「大根」なんて言わずに口をつぐんだんだ、きっと。
叩かれっぱなしの、売れない女優の感想でした。